３４．バズと“可視化” ＿＿ 長期戦略の成果を伝えるという視点

はじめに

「バズ」とは偶発的な出来事として捉えられることが多いものです。今回の抗菌ハンカチのヒットにおいて、それが長期的地道な展開の“可視化”という形で表れた結果ではないかと考えました。

今回のコラムでは、私たちが5年間にわたって展開してきた商品の事例をもとに“伝わる”という現象の背景にある「可視化の可能性」に焦点を当てていきます。

背景：長期戦略としての商品育成

この抗菌ハンカチは、SNS広告やキャンペーンによる短期的な拡販ではなく

以下のような積み上げによって育ててきました。

・小売店舗への地道な営業活動

・展示会出展による定期的な露出

・改良とフィードバックを繰り返す製品改善

・ブランドメッセージの一貫性を意識した展開

これらの取り組みは、すぐに数値化された成果に結びつくものではありませんでしたが、市場における認知の“土壌”を形成するようなものであったと私たちは考えています。

転機：ライブコマースによる“見える化”

そして2025年KOL（キー・オピニオン・リーダー）との提携によってライブ配信を実施した結果、突発的な売上の上昇が発生しました。

これは、商品の特徴が視覚的・情緒的に伝達される機会となったことが影響している可能性があります。

特筆すべきは商品自体に新たな要素を加えたわけではないという点です。

むしろ「変わらない良さ」がようやく伝わった、という感覚がありました。

今回の出来事は「伝える力の強化＝商品の可視化」という仮説を私たちに投げかけてくれました。

仮説：可視化によって“既にある価値”が浮上する

ここで皆さんと共有したい視点は以下のとおりです。

・成果は“変化”によってではなく“可視化”によっても生まれることがある

・商品力そのものが評価されたのではなく“伝わり方”が変化しただけかもしれない

・「伝わっていなかっただけの価値」が見える形になった可能性がある

これまでのマーケティングでは、製品やPR手法を「変える」ことで成果を出すというアプローチが主流でした。しかし今回の事例では「変えずに、見せ方を変える」ことで反応が生まれたのかもしれません。

考察：成果の“再現性”ではなく、“可能性”の共有

このコラムでお伝えしたいのは、特定の手法の再現性ではありません。それよりも、見えづらかった成果をどう可視化するかという視点を、皆さまと共有することに価値があると考えています。

今回のライブ配信は偶然のヒットというよりも、これまでに形成されていた評価の種が、たまたま“伝わる形”で芽吹いたのではないでしょうか。

結論：可視化とは、長期戦略の“伝達装置”である

地道なブランド展開や製品改善の取り組みは、積み重ねとして確かに存在しています。しかし、それが“伝わる”ためには何らかの「可視化」の瞬間が必要です。

つまりバズとは積み重ねが偶然伝わった瞬間であるとも言えます。

その「伝わるきっかけ」は、時代や手段によって変わっていきます。ですが積み重ねを継続していれば、“伝わるタイミング”は必ず生まれると私たちは考えます。