４２．失敗から学ぶ中国市場のリアルvol.３

「崩れなかった理由」──整った構造が守った中国市場での成功例

中国市場で展開することは決して「たくさん売れること」と同義ではありません。むしろ短期間で売れれば売れるほど、類似品や横流しが増え価格が崩壊するリスクは高まっていきます。

しかしそのような市場でも、長く安定して“根付いている”ブランドは存在します。その違いは偶然ではなくあらかじめ「守るための仕組み」が整えられていたからです。

今回はなぜ崩れなかったのか

──成功しているブランドが共通して持っていた“守るための構造”をご紹介します。

第1章：「守る仕組み」を前提にした設計

多くのメーカーは「どう売るか」を優先しますが、

成功しているブランドは「どう守るか」にも同じくらいの比重を置いています。

・販売ルートがシンプルで透明

誰が中国市場に商品を届けているのか把握できる状態をつくり、不要な中間流通を排除。

結果として不明なルートからの横流しを未然に防ぐことができました。

・中国語商標を早期に取得

商品名を聞けばそのブランドと直結するように設計し、類似品が登場しても誤認を防止。

認知そのものが「守りの武器」となります。

・中間問屋を優遇

横流しにメリットが出ない仕組みになると同時に、正規流通ルートそのものが盛り上がる仕組みになりました。

・責任を持つ現地代理店

日本側は当然、中国国内で権限を持つ代理店も同様の“守る意思”を持つことが不可欠。

メーカーと同じ目線で市場を監視し、横流しや無責任な越境ECバイヤーの行為を食い止めていました。

こうした仕組みによって、まるでメーカーが遠隔で直販しているような“リモート直売状態”が実現され市場の安定性が保たれていたのです。

第2章：価格・商標・流通の“三位一体”

中国市場で長くブランドを維持できている企業には共通点があります。それは価格・商標・流通での設計 ができていることです。

・価格設計

どのチャネルで購入してもほぼ同じ価格になるように設定。

結果として、消費者にとって「正規で買っても並行品と変わらない」という状況が生まれ、価格競争が起きにくくなります。

・商標管理

中国国内で商標を取得しているため、類似品やブランド盗用が出ても即座に法的措置が可能。

万が一の際も迅速に対応できる体制が整っています。

・流通管理

国内版と海外版で商品コードを分け、海外版には独自マークを付与。これにより「どのルートを通ってきた商品か」が特定可能となります。

他には、消費者自身がQRコードを読み込むことで正規品かどうかを確認できる仕組みを導入するブランドもあります。

この三つが揃っていれば、類似品や並行輸入品が市場に流れてきてもブランドの価値は簡単には崩れません。

むしろ「正規ルートの強さ」が際立ち、安定した売上を支えることになるのです。

第3章：「正規品で買う理由」を提示できている

さらにもう一歩進んだポイントは、消費者にとって【“正規で買う理由”が明確にされていた】ことです。

・保証・アフターサービス・限定特典

正規販売で購入した人だけが得られるメリットを用意し、購入後の安心感を演出。

正規品であることを選ぶ理由を積極的に伝えることで、ブランドの強化にもつながります。

加えて正規品である理由をプロモートすることでより一層ブランドの強化を狙えます。

・一貫したプロモーション

オンライン広告からKOLによる紹介まで「正規ルート＝安心できる」というメッセージを統一。

消費者の頭の中に「本物を買うなら正規ルート」という認識を刷り込むことができます。

・安心を選ぶ顧客層の形成

「安いから」ではなく「安心できるから買う」という心理を育てることで、価格競争に巻き込まれずブランドが長期的に支持され続ける土台となります。

これらにより消費者が自然と正規ルートを選ぶ仕組みが出来上がると考えられます。

まとめ

中国市場で長期的に成功するには「売れること」以上に「守れること」が重要です。

今回の成功例が示しているのは

✅ 価格・商標・流通の設計

✅ 正規品で買う理由の明確化

という2つの柱が揃えば、類似品や横流しからの値崩れといったリスクに強く、揺るぎにくいブランドとして確立することが可能です。

☑️ 「自社の商品はどうなんだろう？」

そんな小さな疑問からでも大丈夫です。まずは現状を整理するところからご一緒いたします。